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2018年3月11日

分け隔てはしない  

 

『わたしの兄弟たちよ、わたしたちの栄光のイエス・キリストへの信仰を守るために、分け隔てをしてはならない』(ヤコブ21節)

 

 今日は「分け隔て(差別)」について話します。5節には「神はこの世の貧しい人たちを選んで信仰に富ませ、神を愛する者たちに約束された御国の相続者とされたではないか」とあります。そして9節には、「しかし、もし分け隔て(差別)をするならば、あなたがたは罪を犯すことになり、律法によって違反者として宣告される」とあります。

 

 ヤコブは何故このようなことを書いたのでしょうか。実はエルサレム教会のなかに、貧富の差による差別の問題があったのです。2節以下に、『たとえば、あなたがたの会堂に、金の指輪をはめ、りっぱな着物を着た人が入ってくると同時に、みすぼらしい着物を着た貧しい人が入ってきたとする、その際、りっぱな着物を着た人に対しては、うやうやしく(丁重に)「どうぞ、こちらの良い席にお掛け下さい」と言い、貧しい人には、「あなたはそこに立っていなさい。それとも、わたしの足もとにすわっているがよい」と言ったとしたらあなたがたは、自分たちの間で差別立てをし、よからぬ考えで人をさばく者になったわけではないか』とあります。

 

 また、使徒行伝6章にギリシャ語を使うユダヤ人(ヘレニストといい、外国に住んでいて、外国の影響を受けていたユダヤ人)から、ヘブル語を使うユダヤ人(ヘブライオ、生粋のユダヤ人)に対して、「自分たちのやもめたちが、日々の配給でおろそかにされがちだ」と、苦情がでたとあります。そのためにヤコブはこの書簡を書いて、クリスチャンは分け隔て(差別)をしてはならないと警告をしたのです。

 

 わたしたちは、神のみ前に等しい人間だから、信者の間に差別があってはなりません。

ガラテヤ書328節には「もはや、ユダヤ人もギリシャ人もなく、奴隷も自由人もなく、男も女もない。あなたがたは皆、キリスト・イエスにあって一つだからである」とあります。ですから、神の前には差別があってはなりません。たとえこの世的に名誉や地位、格別な身分があっても教会のなかに一歩入れば、みな平等です。キリスト教の告別式に献花の順番がないのはそのためです。神の前にはみな一つだからです。

 

 1945年(昭和20年)に日本国は連合国に敗戦しました。そして戦勝国であるアメリカは日本に民主主義をもってきたのです。戦後生まれの70歳以下の人たちは、今日の民主主義の日本は昔からあったと思っているかもしれませんが、それまでの日本は封建主義の国でした。そして男尊女卑の日本だったのです。そして、すべてを国が統制し、自由に物も言えない時代でした。

 

ところが、戦後、民主主義が入ってきたことにより、男女同権となり、女性にも参政権(選挙権)が与えられたのです。ですから、戦前を知る人たちにとっては驚くような、革新的なことでした。この民主主義の根本はキリスト教の精神であることは言うまでもありません。

 

 戦後間もなく、アメリカでキリスト教の世界大会が開かれ、日本から出席した牧師の話を聞いたことがありました。その人は、日本に民主主義をもたらせた国だから、どんな素晴らしい国かと期待しておりましたが、入国して直ぐに夢が砕かれる現実を見せつけられたのです。それは有色人種に対する差別の現実が根強く残っていたのです。

バスに乗るのも、白人は前の入り口から、そして黒人は後ろから乗車させられていたのです。しかも、白人は大勢になると黒人が席を立たされるという差別があり、その有色人種に対する差別の現実に、これが民主主義のアメリカかと幻滅を感じたそうです。

 

 ところが、世界大会の会場に入ったとたんに、これまで見てきた現実とまったく異なった世界を見たのです。そこには白人の牧師も黒人の牧師も、互いに握手をし、抱擁して挨拶をしている姿を見て、これがほんとうのアメリカだと知らされたと話していました。つまり、神の前にはすべて平等であるということです。

 

 マルチン・ルーサ・キング牧師の公民権運動の話を少しします。民主主義の国であるはずのアメリカに、1950年頃に、まだ人種差別の問題が根強く残っていました。とくにアフリカ系アメリカ人(黒人)に対する差別は深刻な問題でした。そこでキング牧師が立ち上がったのです。いちばん具体的に差別をされていたのは、モントゴメリーのバスでの差別問題で、車を持たない彼らには深刻な問題でした。しかし彼らはキング牧師に従ってボイコットをし、彼らは徒歩で何キロも歩いて通勤をしました。その行列が延々と続き、通勤バスはがらがらの状態で沿道を走っていましたが、根負けしたバス会社が差別をしなくなったのです。こんな民権闘争がアメリカ全土でつづいた結果、1964年の議会で公民権法が成立したのです。そして有色者に対する差別がなくなり、今日では黒人の大統領が誕生するまでになったのです。(2018.3.11