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2019年5月12日


王妃エステルの物語

 

『あなたがもし、このような時に黙っているならば、ほかの所から、助けと救がユダヤ人のために起るでしょう。しかし、あなたとあなたの父の家とは滅びるでしょう。

あなたがこの国に迎えられたのは、このような時のためでなかったとだれが知りましょう。そこでエステルは命じてモルデカイに答えさせた、「あなたは行ってスサにいるすべてのユダヤ人を集め、わたしのために断食してください。三日のあいだ夜も昼も食い飲みしてはなりません。わたしとわたしの侍女たちも同様に断食しましょう。そしてわたしは法律にそむくことですが王のもとへ行きます。わたしがもし死なねばならないのなら、死にます」』。(エステル記414節以下)

 

 

 母の日はいつも聖書に登場する母の話をしますが、今日は母でありませんが、聖書に登場する女性の話をします。その女性はユダヤ人にも関わらず、ペルシャ帝国の王妃となったエステルです。彼女は大臣ハマンがユダヤ人皆殺し計画が断行されそうになったとき、身命を投げ出してその窮地からユダヤ人を救ったのです。

 

 聖都エルサレムがバビロン帝国によって滅ぼされ、エルサレムの主立った者たちがバビロンに連行されました。これを「バビロン捕囚」といいます。ところが五十年後、紀元前536年に、新しく台頭したペルシャ帝国がバビロンを滅ぼしました。そしてクロス王は捕囚民を解放したので、故国エルサレムに帰還した民がありましたが、そのままペルシャ帝国の支配のもとに留まった民のほうが多かったのです。

 

 そして、ダニエルたちはこの政府に重く用いられ、王に次ぐナンバー・ツーの役人として用いられたのです。もうひとりは王妃となったエステルでした。アハシュエロス王にはワシテという大変美しい妃がおりましたが、気位の高い女性で、宴席に出るようにとの王の勧めを拒否したため、妃の位から追放されました。そこで新しい妃を迎えるために国中から、美しい女性を集めてコンテステトをした結果、エステルが一位に選ばれました。彼女は身分はユダヤ人でしたが、それを隠して王宮に入り王妃となりました。

 

 この国に、王から大変に信頼されていたハマンという大臣がいました。彼が通りを歩くと皆こぞって頭を下げて敬意を表しましたので、彼は得意でした。ところがひとり、王宮の門を守るモルデカイだけはハマンを無視して敬礼をしないので、ハマンが気になって調べたところが、彼はユダヤ人であることが判明しました。そこでハマンはユダヤ人憎しと、王に対して「ユダヤ人が、国家を転覆する陰謀を企んでいる」奏上し、ユダヤ人抹殺の勅令を出させたのです。

 

 それを知った国内のユダヤ人の間に大混乱が起りました。そしてモルデカイは王妃エステルのところに行って、王になんとか懇願して勅令を撤回するように話してほしいと願ったのです。そのとき、「あなたがこの国に迎えられたのは、このような時のためでなかったとだれが知りましょう」と訴えています。

 

 そこでエステルはユダヤ人のためにひと肌脱ぎます。それでも、「わたしがもし、死ななければならないのなら、死にます」と受けたのです。ところが、この国では、王妃といえども王の許しがなければ王の前に出ることはできませんでしたが、このところ王の召しがとんとなかったので、勝手に王の前に出られる状況ではありませんでした。でもエステルは何とかしてユダヤ人を救おうと決死の覚悟で王の前に出たところが王は不思議なほど機嫌がよく、「王妃エステルよ、なにを求めるのか。あなたの願いは何か、国の半ばでもあなたに与えよう」と言ったのです。

 

 そこでエステルが大臣ハマンのユダヤ人抹殺の陰謀を話し、未然に防いだのです。そしてハマンはユダヤ人を殺すために立てた木に自分とその家族が掛けられて殺されたのです。

箴言2627節に「穴を掘る者は自らその中に陥る」とありますが、正しくそのみ言葉の通りになったのです。また詩篇715節にも、「彼は穴を掘って、それを深くし、みずから作った穴に陥る」とあります。(2019.5.12