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2016年8月21日


無学な者に知恵を与えます

 

 

『み言葉が開けると光を放って、無学な者に知恵を与えます。』(詩篇109篇130節)

 

 

 ここにある「無学な者」とは、「教養、学歴のない者」のことで、そんな人でもみ言葉が啓示

(開かれる)と、知恵が与えられるのです。この知恵とは人的な知恵ではなく、神から聖霊によって与えられる知恵です。この知恵に満たされると、この世のどんな問題でも解決することが出来る神からの知恵が与えられるのです。

 

 明治時代に東京で活躍したキリスト教の伝道者で、高地由太郎という人がいました。彼の得意の分野は刑務所での伝道でした。そして多くの人を改心に導いたのです。そして、その働きの著しさを認められて天皇陛下から叙勲を受けたほどの人でした。しかし、彼の人生はそんな叙勲を受けるほどの立派な人生ではありませんでした。少年のころに丁稚奉公で商店で働いていましたが、遊ぶ金が欲しく主人を殺して盗み、その犯行を隠すために放火をしたのです。そして外から帰って来たように装って「ご主人さまが中にいる」と訴えたのです。ところが警察が調べると、ニ、三日前に買ったばかりの一斗缶の減り具合があまりに多いので不信を抱いた警察は少年を問い詰めたところが、少年の犯行であることが判明したのです。

 

 裁判の結果、本来なら死刑が宣告されるところですが、未成年の犯行ということで一等減ぜられ終身刑の判決を受けました。(無期懲役は十年を経過すれば仮釈放が可能ですが、終身刑は一生拘禁する刑罰です)。まだ若い未成年の少年が一生涯監獄の中に拘禁されるなんて、少年にとって我慢のならんことで、獄窓でだれからも手がつけられないほどの乱暴者になりました。

 

 ところがある日、おとなしそうな青年が高地由太郎の房に入れられてきました。その青年は、その房で手を組んで何か一所懸命に祈っていたので、「お前はどんな罪を犯してきた」と聞きましたら、その青年は「わたしはなにも悪い事はしていません」と答えたのです。なにも悪いことをしていないのに、こんなところに入れられるはずはない「正直に答えろ」とその青年をひどく殴りました。すると青年は「父よ彼らを赦してください、彼らは何をしているのかわからないからです」と祈っていたのです。

 その騒ぎを聞きつけて警察官が駆けつけ、その青年を別の房に連れて行きました。そのとき高地青年は「お前のその力はどこにあるのだ」と問うと、青年は「聖書を読みなされ」とだけ言って行ってしまいました。その青年は熱心なクリスチャンで、街頭で路傍伝道をしていたところが、それを見たキリスト教が大嫌いな警察官が、「もっと静かにやれ」と注意をしたら、静かにするどころか、ますます大きな声で叫ぶので、頭にきた警官はその青年を警察に連行して高地由太郎の房に入れてしまった、というわけでした。

 

 その青年の最後の言葉、「聖書を読みなされ」といった言葉が心に残り、彼は聖書を取り寄せて開いてみましたが、文字が読めない彼にはさっぱりわかりませんでした。ところが、彼が皆に恐れられ、嫌われて一生こんなところで自分の生涯が終わるのかと考えると、虚しさがこみあげてきました。そして一度は捨てた聖書を読んで見る気持ちになりました。幸いなことにクリスチャンの刑務官がいましたので、いろはを教えてもらって読みはじめました。聖書には誰でも読めるように漢字にはルビがついていますので、いろはが分かれば読むことができました。

 

 そして、聖書のみ言葉を読むようになり、彼の心情が少しずつ変化をしていきました。そして彼は生まれ変わり、模範囚となりました。彼のみ言葉の読み方は少し変わっており、呼んだみ言葉のところをちぎって、飲み込んでしまうのです。そして二十二年間の獄中生活でしたが、しかも模範囚でしたので、明治天皇の崩御のときに恩赦で釈放されたのです。

 

 それから、東京でキリスト教の伝道者となり、キリストの福音を伝える人となったのです。そして、その功績を讃えられて叙勲の栄誉に与ったのです。前科者が叙勲に与るなんて考えられないことですが、彼の働きと功績はそれだけ大きかったとういうことでしょう。つまり、聖書のみ言葉が無学だった高地由太郎青年を変えたのです。

 

 わたしたちの活水の群の創始者である柘植不知人先生も無学の人でした。1886年に文部大臣、森有礼のときに小学校令が公布されて尋常小学校ができましたが、そのとき柘植少年は13歳でしたので、その機会がありませんでした。まさしく無学の人でした。ところが40歳のときにキリスト教に出会い救われて伝道者となり、神に尊く用いられて大きな働きをしたのです。当時東京で500人以上の聴衆を集めるのは、救世軍の山室軍平と柘植不知人だと言われるほど尊い働きをしました。(20168.14

20168.21