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2017年8月20日


良きサマリヤ人の譬え話

 

『ところが、あるサマリヤ人が旅をしてこの人のところを通りかかり、彼を見て気の毒に思い、近寄ってきてその傷にオリブ油とぶどう酒とを注いでほうたいをしてやり、自分の家畜に乗せ、宿屋に連れて行って介抱した。翌日、デナリ二つを取り出して宿屋の主人に手渡し、「この人を見てやってください。費用がよけいにかかったら、帰りがけに、わたしが支払います」と言った。この三人のうち、だれが強盗に襲われた人の隣り人になったと思うか』。彼が言った、「その人に慈悲深い行いをした人です」。そこでイエスは言われた、「あなたも行って同じようにしなさい」』。ルカ福音書10章37節)

 

 

 このところは、イエスがよきサマリヤ人の譬え話をされたところで、ほんとうの隣り人とは誰かと教えられたところです。この話にいたる動機は、ある律法学者がイエスに、「何をしたら永遠の生命を受けられるか」と質問をしたのです。そこでイエスは「律法にはなんと書いてあるか」と言われると、彼は「心をつくし、精神をつくし、力をつくし、思いをつくして、主なるあなたの神を愛せよ」。また「自分を愛するように、あなたの隣り人を愛せよ」とあります、と答えました。するとイエスは「あなたの答は正しい。そのとおり行いなさい。そうすれば、いのち(永遠の生命)が得られる」と答えられたのです。

これは十戒の一戒~四戒と五戒~十戒の要約したものを言ったのです。そしてイエスは、この譬え話を語られたのです。

 

 

 ひとりの旅人が行商の旅に出たところが、道中で強盗に遭遇して、荷物は奪われて瀕死の状態になりました。ところが祭司が通り掛かったので助けを期待しましたが、その祭司は遠くから見るだけで通り去ってしまったのでがっかりしました。その次に近づいてきたのはレビ人でした。この人も神に仕えて奉仕をしている人でしたので、助けを期待しましたが、そのレビ人も遠目に見て、助けないで行ってしまいました。

 

 祭司は、この旅人がもう死んでいると思ったので、死んだ人に触れると死の汚れが移ると、宮で奉仕ができなくなると考えたに違いありません。また、レビ人は、強盗がまだそこらにいて、ぐずぐずしていると、自分も強盗に襲われるのではないかと恐れたのです。いつも神殿に仕えて神のご用をしている人が、こんなことではたまりません。

 

 三番目に近づいたのがサマリヤ人でした。それを見た瀕死の旅人は恐れました。なぜなら、ユダヤ人とサマリヤ人とは、日頃から仲が悪く、むしろユダヤ人が彼らを蔑んでいたのです。そこで彼は酷い目に会わされると覚悟をしました。ところが、サマリヤ人は近づきその人を介抱したのです。そのうえ、隣の町の宿屋まで運び、二デナリを払って、「この人を見てやってください。費用がよけいにかかったら、帰りがけに、わたしが支払います」と言ったのです。

 

 

 そこでイエスは、この三人のうち、だれが強盗に襲われた人の隣り人になったと思うかと律法学者に問うたところが、彼は「その人に慈悲深い行いをした人です」と答えました。するとイエスは、「あなたも行って同じようにしなさい」と言われたのです。

 

 

 ヨハネ第一書3章18節には『わたしたちは、言葉や口先だけで愛するのではなく、行いや真実とをもって愛し合おうではないか』とあります。どんなに宗教的に熱心であっても、愛がなければ虚しいものです。そして、われわれの隣り人とは、助けをいちばん必要としている人です。この話は、当時の宗教家たちに対する痛烈な皮肉だったのです

また、マタイ福音書9章13節で『わたしが好むのは、あわれみ(愛)であって、いけにえ(宗教的儀式)ではない』とイエスは言っておられるのです。

 

 ではサマリヤ人が何故、ユダヤ人から嫌われ差別を受けるようになったのか。それについて少し話します。イスラエルはソロモン王の死後、紀元前977年に王国は「北イスラエル王国」と「南ユダ王国」とに分裂してしまったのです。そして北イスラエル王国は紀元前722年にアッスリヤ帝国の攻撃を受けて、首都サマリヤは陥落しました。そしてサマリヤの多くの人がアッスリヤに連行されたのです。これを「アッスリヤ捕囚」と言います。そしてアッスリヤは自国民をサマリヤに連れてきてそこに住まわせたので、彼らはサマリヤ人と結婚し同化してしまったのです。そこで血の純潔を大切にするユダヤ人から軽蔑され、蔑まれるようになり、交わることを避けるようになったのです。

 

 ですから、北のガリラヤ地方に住むユダヤ人が、南のエルサレムに詣でるために南下するときも、真直ぐ南下すると、途中にサマリヤの町があるので、そこを通ることを避け、わざわざヨルダン川の東を迂回したのです。それほどサマリヤ人と交わることを嫌ったのです。ところがイエスはそのサマリヤの町に入り、スカルの井戸辺でサマリヤの女性に近づき、「水を飲ませてくれ」と言っています」そのとき、サマリヤの女性が「あなたはユダヤ人なのに、どうしてサマリヤの女のわたしに、飲ませてくれとおっしゃるのですか」と言っています。(ヨハネ福音書4章)

2017.8.20