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2011.2.20
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 ロトと決別したアブラハム

 

『アブラムは天幕を移してヘブロンにあるマムレのテレビンの木
のかたわらに住み、その所で主に祭壇を築いた』。

                    (創世記1318節)

 

 このところはアブラハムが甥のロトと決別をしたところです。
そしてここにアブラハムの信仰の人となりがあらわされています。 

 ロトもアブラハムの一族でウルの地で一緒に住んでいたました
が、そこで父が死にました。そして一族がハランの地に移り住ん
だとき、ロトも一緒にウルの地を出てハランの地に移住をしたの
です。ところが、この地で神はアブラハムに『わたしが示す地に
行きなさい』との啓示がありましたので、それに従い『その行く
先を知らないで』移り住んだのがカナンの地でした。

 

 ところが、甥のロトも一緒に出掛けています。ただアブラハム
とロトとの違いは、アブラハムは神の啓示に従って信仰的に行動
をしたのに、ロトはただアブラハムについて出てきたのです。ロ
トは父を失った後、大好きな叔父さんと行動をしたのにすぎなか
ったのです。そして神がアブラハムを祝福されたとき、また行動
を共にしているロトも同じように恵まれてたくさんの財産(家畜)
を得たのです。

 

 ところが、アブラハムの羊飼いたちとロトの羊飼いたちの間に
争いが起こるようになりました。それは羊が多くなると牧草や水
の絶対量が足らなくなるからです。そこで自分たちの羊によい牧
草のあるところ、水のあるところで争いが起こるようになりまし
た。そして心を痛めたアブラハムはロトの一族と行動を別にする
ことを考えたのです。『主のしもべは争うべからず』とあります
が、アブラハムはなんとかして争いを避けたいと考えたのです。

 

 そこである日、ロトを山の上に連れだして、『わたしとあなた
の間にも、わたしの牧者たちとあなたの牧者たちの間にも争いが
ないようにしましょう。…どうかわたしと別れてください。あな
たが左に行けばわたしは右に行きます。あなたが右に行けばわた
しは左に行きましょう』と決別の気持ちを伝えたのです。

 

 そこでロトは『目を上げてヨルダンの低地をあまねく見わたす
と、主がソドムとゴモラを滅ぼされる前であったから、ゾアルま
で主の園のように、またエジプトの地のように、すみずみまでよ
く潤っていた。そこでロトはヨルダンの低地をことごとく選びと
って東に移った』のです。そしてロトは死海のほとりのソドムと
いう町に移り住みました。そしてアブラハムに残されたところは
山地でした。

 ここで考えたいのは、アブラハムは叔父でロトから比べれば一
族の年長者ですから、叔父のアブラハムが先に選ぶ権利があるの
です。それをロトに先に選ばせたのは、ロトに対する気配りでし
た。ここにアブラハムの優しさが現れているのです。そしてロト
が選んだ地はソドムという地で、人々は、はなはだしく悪く、後
に神が火と硫黄で滅ぼされた地だったのです。そしてそのときに
ロトが持ち込んだ財産を全て失ってほうほうのていで逃げ出さな
ければなりませんでした。つまりロトはアブラハムを出し抜いて
得をしたようでしたが、結局は損をしたのです。

 

 わたしたちはクリスチャンですから人を出し抜いたり、押しの
けたりはしません。そのために損をしているように思われますが、
結局は得となるのです。教会に造船所に勤める工員さんがおられ
ました。その人は大変敬虔なクリスチャンで、生涯恵まれた信仰
生涯を全うされました。その人がいつも大切に鞄の中に入れて持
ち運んでいた社内報がありました。

 その中には、その人について彼の部下が書いていた記事があり
ました。そのタイトルは『おやじさんはクリスチャン』という題
で、その人の人となりが書いていました。こんなことが書いてい
ました。「班長はお人好しのために、部下の自分たちはいつも苦
労をする」といったことです。たとえば、仕事をするとき各班の
班長が集まって自分たちのする仕事を選ぶのですが、みんな少し
でも楽な仕事、部のいい仕事を我先にと競争のようにして選ぶの
です。が、その人はみんなが選んでいるのをじっと待っていて、
だれもしたくないような部の悪い残り物の仕事を選んだそうです。
そのため部下たちは「自分たちの班長はお人よしだから部下が苦
労する」と、よくぼやいていたそうです。彼はクリスチャンでし
たから人を押し退けるようなことができなかったのです。

 

 そして、無事定年退職をしましたが、会社はその人に『工師』
という最高の栄誉を与えたのです。これは工員さんの師範という
ような意味で、会社の中でも一人か二人あるかないかの栄誉だそ
うです。彼もアブラハムだったのですね。ですから神は『工師』
という栄誉を与えられたのです。

 

 最後に『アブラムは天幕を移してヘブロンにあるマムレのテレ
ビンの木のかたわらに住み、その所で主に祭壇を築いた』とあり
ます。ロトと別れた後アブラハムが移り住んだのは、ヘブロンの
マムレという地だったのです。このマムレとは「神との交わり」
という意味で、彼にとっては最も幸いな地となりました。そして
ここでアブラハム一族は神の祝福を得たのです。わたしたちもこ
の神との交わりを大切にしたいものです。これがわたしたちクリ
スチャンの命なのです。「損して得とれ」という言葉があります
が、神は決して損では終わらせなさいません。アブラハムもそう
でした。                 
                      (Feb,20,2011)