本文へスキップ
2011.4.3
                                                      戻る

  

       

    人間の身勝手さと神の愛

 

『神はわらべの声を聞かれ、神の使は天からハガルを呼んで言
った、「ハガルよ、どうしたのか。恐れてはいけない。神はあそ
こにいるわらべの声を聞かれた。立って行き、わらべを取り上げ
てあなたの手に抱きなさい。わたしは彼を大いなる国民とするで
あろう」。神がハガルの目を開かれたので、彼女は水の井戸のあ
るのを見た』。               (創世記21章17節)

    

今日は「人間の身勝手さと神の愛」について話します。アブラ
ハムが神の命に従ってカナンの地に来たのは75歳のときでした。
ところが一向に約束の跡継ぎが与えられないのです。しかし妻の
サラも高齢になりましたので彼の心に一抹の不安を覚えました。
そんなときにサタンの声が聞こえてきたのです。「もうサラは若
くないから、彼女の仕え女ハガルによって世継ぎを得たらいいで
はないか」と。そして妻サラも納得をしたのでハガルを迎えいれ
たのです。

 

そしてハガルが妊娠をしたことにより家庭の中に不和が生じた
のです。それは彼女が増長して主人サラを見下すようになり、主
述関係が逆転してしまったのです。家庭は砂漠のオアシスのよう
なところでなければなりません。外で働く者たちが一日の労働を
終えて憩うところが家庭だからです。ところが、その家庭が紛争
の場になったのですからアブラハムにとっても身の休まるはずが
ありません。

 

その結果、サラによる苛めがはじまったのです。ここにまず人
間の身勝手さがあります。そしてその苛めに耐えられずハガルは
家を出ました。ところが『主の使は荒野にある泉のほとり、すな
わちシュルの道である泉のほとりで彼女に会い、ハガルを慰めま
した。人間は身勝手ですが、神はハガルのような弱い者、あわれ
な者に近づいて愛を注いでおられるのです。

 

そして『「あなたは女主人のもとに帰って、その手に身を任せ
なさい」。主の使はまた彼女に言った、「わたしは大いにあなた
の子孫を増して、数えきれないほどに多くしましょう」と慰めら
れたのです。そしてこの言葉のようにこの子(イシュマエル)の
子孫がこの後アラブ民族として大きく成長していくのです。

 

ところが、もう子供を望めないはずのサラが妊娠をして、アブ
ラハムの百歳のときにイサクが誕生をするのです。これこそ神が
望まれた約束の世継ぎでした。そしてイサクが成長をしたとき、
一つの問題が起こったのです。ハガルに生ませた子供が長男で、
正妻のサラが生んだこどもイサクが二男となりますので、これは
アブラハム家にとっては具合が悪いことになりました。そこで、
そのイシュマエルを僅かのパンと革袋一杯の水を与えて荒野に追
放してしまったのです。人間の身勝手というか理不尽なことをす
るものです。人間はこのような理不尽なことを平気でするのです。

 

私の友人がまだ幼いころ、子どものない親戚に養子にやられた
そうです。突然、親から離されどんなにさびしい思いをしたこと
か。養家はその養子を大事に育てて何でも欲しいものを買って与
えてくれたそうです。でも親から離された寂しさは慰められませ
んでした。ところが、その養家に子供が生まれたのです。両親は
その子の成長するのを見届けてから、その養子を「もういらない」
と言って実家に帰されたのです。その友人は言っていました。
「人間なんて身勝手なものだ」と。

突然、わずかばかりのパンと水を与えて荒野に追い出された
ハガルとイシュマエルは、行く宛てもなく途方に暮れました。
そしてパンも水もなくなり、あとは死を待つばかりとなったとき、
『神はわらべの声を聞かれて』、天の使がハガルの前に現れまし
た。そして彼女の目を開かれたとき、『神がハガルの目を開かれ
たので、彼女は水の井戸のあるのを見た』のです。そしてこの親
子の命は助かったのです。

 

人間は身勝手で、自分たちの都合でハガルとイシュマエルを
追放しましたが、神はその哀れなふたりに現れ救われたのです。
そして『わらべを取り上げてあなたの手に抱きなさい。わたし
は彼を大いなる国民とする』と約束されたのです。ここに神の
愛があるのです。讃美歌512番に『ひとは棄てつれど、きみは
棄てず』とありますが、この『きみ』とは言うまでもなく神で
す。

 

このハガルとイシュマエルはこの後、アラビア半島の西に住
んで砂漠の民となりました。その後エジプトの女性と結婚しま
した。そしてこの子孫が『大いなる国民とする』といわれたよ
うに大きな民族となりました。それが『アラブ民族』なのです。
そして彼らは「自分たちのご先祖イシュマエルがアブラハムの
長男で正当な後継者なのに二男のイサクが追い出した」と言っ
て、今でもユダヤ民族を憎んでいるのです。そして今日の中東
紛争(アラブとイスラエルの紛争)の原因は、四千年前のアブ
ラハムたちの身勝手さに原因があるといわれているのです。

                   (Apr,03,2011