みな主のものである

『地と、それに満ちるもの、世界と、そのなかに住む者とは主の
ものである。主はその基を大海のうえにすえ、大川のうえに定め
られた』。　　　　　　　　　　　　　　　　　 (詩篇24篇1節）

　このみ言葉は、「この世のすべてのものは神のものであって、
自分のものは一つもない」と言っているのです。また50章12節
には『世界とその中に満ちるものとは、わたしのものだからであ
る』とあります。つまり、すべては神のものであって、神からの
「あずかりもの」という意味です。

　徳川家康は豊臣家を滅ぼして天下を取り、朝廷から「征夷大将
軍」と任じられてからも、「天下は天（神）からのあずかりもの」
と言って、「一汁三菜」の質素な食生活をしたと言われています。
これが、徳川幕府が二百数十年続く土台を築いたのです。そして
徳川幕府は将軍慶喜のときに政権を朝廷に返還をしました。これ
を「大政奉還」と言います。

　反面、豊臣秀吉は尾張中村の貧しい百姓の出で、苦労をして天
下をとり朝廷から「関白」の位まで得ましたが、天下を取ってか
らは目にあまる贅沢をしたので彼の天下は一代かぎりで滅んでし
まったのです。

　ポール・リース博士はケズィックの講師として著名な人で日本
人の多くの人から愛された先生でした。また、わたしたちの山手
教会にも来てご用をしてくださったことがあります。この先生は
ある集会でこんな話をしてくださいました。「わたしは聖書の教
えに従い、自分の収入の十分の一を献金して、残の十分の九で生
活をして、これでいいと思っていました。ところがある日、十分
の十、つまり全部が神のものと示されました」と話しておられま
した。要するに、全部が神のもので、神からのあずかりもの、自
分のものは一つもないというのです。ところが、この道理がわか
らない人は自分勝手なわがままをして不幸を招いているのです。

　ルカ福音書12章16節にこんな言葉があります。『ある金持の
畑が豊作であった。そこで彼は心の中で、「どうしようか、わた
しの作物をしまっておく所がないのだが」』。この主人の間違い
は「わたしの作物を…」と言っている点です。確かに一年間苦労
して得た収穫かもしれませんが、神の恵みがなければ得ることの
ない収穫です。ですから全部自分のものにしないで、神に感謝を
して、神の栄光のために用いることが大切なことです。そしてま
た、神はそんな人を恵んでくださるのです。

　ある町に働き者の夫婦がいました。夫は貸衣装店、妻は美容院
を経営し、結婚式場とタイアップしてたいへん繁盛して、町の人
たちから羨ましがられていました。そしてたくさんお金が貯まっ
たので町外れに本建築の大きな家を建て、回りを高い塀で囲んだ
ので、町の人々から「大久保御殿」と言われていました。

　それから間もなくしてその夫婦の関係があやしくなりました。
主人が毎晩のように夜遊びをするのです。そこで夜遅くに夫婦喧
嘩がはじまり、その喧騒が静かな田園地帯にこだまするのです。
ところがある朝、主人が明け方に帰ってきて、また夫婦で大喧嘩
となりました。主人は「おれが稼いだ金で遊んで何が悪い」と言
って喚き散らす始末です。そのあげく頭にきた主人は離れの物置
から灯油を持ち出して部屋に撒いて火を付けたのです。近隣から
たくさんの消防車が駆けつけて大騒ぎとなりました。そして主人
は放火の実行犯で警察の調べを受けて検察庁に送られました。そ
れを知った町の人たちは「これであの夫婦も終わりだな」と冷た
く言い放ったということです。どうしてこんな不幸なことが起こ
ったのでしょうか、考えてみてください。

　ある大学で学生を対象にアンケートをとりました。「あなたが
いちばん大切と思うものはなんですか」と、するといちばん多か
った答えが「お金」ということでした。まだ人生経験の少ない若
者たちですからこんな答えだったのかも知れませんが、しかし、
ほんとうにこのように考えている人も多いと思います。でもお金
である程度のことができても、それでなんでも解決できるとはか
ぎりません。ほんとうの愛も友情も得ることができません。

　ある北欧の詩人が書いたもので、題は「お金で買えるものと買
えないもの」と言う作品があります。

　食物はお金で買えるが　　食欲は買えない

　薬はお金で買えるが　　　健康は買えない

　ベッドはお金で買えるが　睡眠は買えない

　知識はお金で買えるが　　智恵は買えない

　化粧品はお金で買えるが　美しさは買えない

　別荘はお金で買えるが　　心地よさは買えない

　快楽はお金で買えるが　　喜びは買えない

　友達はお金で買えるが　　友情は買えない

　使用人はお金で買えるが　忠実さは買えない

　静かな日々はお金で買えるが

　　　　　　　　　　　　　平安は買えない

　最後に、伝道の書5章10節を読んでみましょう。

　　『金銭を好む者は金銭をもって満足しない。

　　　富みを好む者は富を得て満足しない』。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（Oct,2,2011）