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2010.10.24
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ひとりの聖徒のゆえに・・・

 

『すでに航海が危険な季節になったので、パウロは人々に警告

して言った、「皆さん、わたしの見るところでは、この航海では、

積荷や船体ばかりでなく、われわれの生命にも、危害と大きな

損失が及ぶであろう」。しかし百卒長は、パウロの意見よりも、

船長や船主の方を信頼した』。     (使徒行伝2711節)

 

 パウロがローマ皇帝に上告したため、彼は百卒長に引率されて

カイザリヤから船出して地中海沿岸を航行してローマに向かいま

した。そしてラサヤという町の「良い港」というところで風向き

を待っていましたが、すでに航海が危険な季節になっていたので、

パウロは「この航海は積荷や船体ばかりでなく、われわれの生命

にも危険と損失が及ぶであろう」と警告をしましたが、百卒長は

パウロの意見よりも、船長や船主の方を信頼したのです。

 

 そして、南風が静かに吹いてきたので、彼らはこのときとばかり

に錨を上げて航行したのです。ところが間もなく『ユーラクロン』

という暴風に遭遇して、船は流されるままに任さなければならなく

なりました。そして暴風に悩まされて人々は積荷を捨てはじめ、

三日目には船具までも捨てて船を軽くしなければ助かる最後の望み

もなくなったのです。

 

 そのとき、パウロは言いました。『わたしの忠告を聞きいれて、

クレテから出なかったら、このような危害や損失を被らなくてすん

だはずであった。だが、この際、お勧めする。元気を出しなさい。

舟が失われるだけで、あなたがたの中で生命を失うものはひとりも

いないであろう』と言って励ましたのです。そして、そのパウロの

言葉のとおりに、全員が上陸して救われたのです。

 

 さて、ここで二つのことが導かれます。その一つは、もし百卒長

がパウロの言葉に従っていたら、こんな嵐に遭遇することもなく、

また身を危険に曝すようなこともなかったということです。パウロ

は自分の経験から危険を警告したのではなく、彼は航海については

全くの素人です。でも彼が神から示されたからです。そして百卒長

も船長や船主の言葉よりもパウロの言葉を信じて従っていたら、

こんなことにはならなかったのです。

 

 人間はとかく何かを判断したりするとき、自分の有利な方向に

判断しやすいものです。百卒長も早くパウロをローマに護送して

自分に任務を終わらせたい、という思いがあったのかもしれませ

ん。また、船長も同じ思いだったに違いありません。わたしたち

はこのような場面に立たされたときは、よく祈って神の御心に耳

を傾け、それに従うことが大切です。そしてそれがいちばん大切

なことです。

 

 歴代志下2020節に『あなたがたの神、主を信じなさい。そう

すればあなたがたは堅く立つことができる。主の預言者を信じなさ

い。そうすればあなたがたは成功するでしょう』とあります。神の

言葉に信じ従うことが大切なことです。これは南ユダのヨシャパテ

王が国民を激励して言った言葉ですが、わたしたちも自分の考えば

かりで行動するのではなく、神の言葉を信じて従うことが大切です。

そしてその行動には失敗はありません。

 

 次に、ユーラクロンという暴風に遭遇したとき、その舟の中に

神を畏れ、神に仕える聖徒パウロが乗船したことがさいわいした

のです。なぜなら、神はそのひとりの聖徒のために全員を守られ

たのです。わたしもよく飛行機に乗って海外に行きます。勿論、

国内旅行のときでもそうですが、飛行機に乗るとまず、その飛行

機が飛び立つ前に祈ります。「どうぞ、この飛行機を守って無事

に目的地に導いてください。この飛行機の中にあなたが臨在して

ください。またパイロットたちの操縦を祝福してください。そし

て五百人の乗客全員をみんな無事に導いてください」と。神はそ

の飛行機の中に神を畏れる敬虔な『聖徒ひとりのゆえに』お守り

くださると信じているからです。

 

 また、皆さんの家族のだれも信仰がなくあなた一人であっても、

決して失望することはありません。『その一人のクリスチャンの

ゆえに』、その家族全員が神に守られ、祝福を受けるのです。です

から、その神を畏れる敬虔な『あなたひとりが大切なのです』。

 

 その反面、神に背いたひとりの人のために乗客全員が身の危険

に曝された出来事が旧約聖書の中にあります。それは預言者ヨナ

の物語です。ヨナは神から「ニネベに行って伝道をするように」

と勧められましたが、彼はそれに従うことができず、神に背を向

けてタルシシ行きの舟に乗り込んだのです。そのために暴風に遭

い乗客全員が危険な身に遭遇しました。そこで船長は、このなか

に神に背いて罪を犯した人がいるに違いないとくじを引いたときに

ヨナに当たったのです。ヨナは神の怒りの結果であることを悟った

のです。つまり、ひとりの神に背いた罪人のために同乗していた

乗客全員が危険な身に遭ったのです。

 

 最後に、ペテロ前書312節『主の目は義人たちに注がれ、

主の耳は彼らの祈りにかたむく』。このみ言葉のように、神は神を

畏れる敬虔な人をいつも見守ってくださり、また、そのような人の

祈りを聞いて助けてくださるのです。ですからあなたがたも、その

家族のために神を畏れる敬虔な人であってください。(Oct,24,2010)