『わたしたちが神を愛したのではなく、神がわたしたちを愛してくださって、
わたしたちの罪のためにあがないの供え物として、御子をおつかわしになった。
ここに愛がある。愛する者たちよ、神がこのようにわたしたちを愛してくださっ
たのであるから、わたしたちも互いに愛し合うべきである。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（ヨハネ第一の手紙4章10〜11節）

　今年は新年標語に『あなたがたはキリストの福音にふさわしい生活をしなさい』
というみ言葉が与えられました。そして、イエスの十字架の死によって罪が贖われ
た者として、クリスチャンらしい生きかたをしなさいと導かれました。

　このクリスチャンらしい生きかたとは、まず第一に『聖い生きかた』をおくる
ことです。これについては、新年礼拝で話しました。

　本日はその第二として、キリストの福音にふさわしい生活とは『愛の生活を送る
こと』という面から教えられたいと導かれています。キリスト教は『愛の宗教だ』
と言われています。それは前掲のみ言葉にあるように、まず神が御子を贖いの供え
物としてこの世に送ってくださったように、それほど神がわたしたちを愛してくだ
さっていることなのです。このキリストの降誕（クリスマス）こそ神の愛の発露
なのです。ですから、わたしたちも『互いに愛し合うべき』とあるのです。

　人間がほんとうにしあわせに生きていくために大切なことは、『愛』であります。
どんなに経済的に恵まれて裕福であっても、愛がなければ虚しいものです。ある
とき大学生に「しあわせに生きるために大切なものは何か」というアンケートを
したところ、いろいろな答えが返ってきましたが、そのなかでも『お金』と答えた
人と『愛』と答えた人がいたそうです。どちらも大切なものですが、その中でも
『愛』は絶対的なものなのです。皆さんもこの世の『お金』にしあわせを求めない
で、『愛』にしあわせを求めてください。詩篇16篇2節に『あなたのほかに、
わたしの幸いはない』とあります。

　愛されたことのない人は、人を愛することはできないと言われています。また、
愛されてはじめて人を愛することができるのです。そしてわたしたちは、神に愛
された者ですから、人を愛することを知っているのです。その反対に「小さなとき
から虐待されて育った子供は、また大人になったときに虐待するようになる」と
言われています。

　昔、神戸の王子動物園でチンパンジーが子供を生みました。そこで飼育係がその
赤ん坊を母親に抱かせようとしたところが、母親はその赤ん坊をポイと投げ捨てた
というのです。そこでもういちど母親に抱かせましたが、また同じように投げ捨て
たのです。その飼育係はチンパンジーにも母性本能があるはずなのにと、不思議に
思って動物園の育児記録を調べたところ、その母親も子どものころに母親から抱か
れたことがなく、飼育係が哺乳瓶で育てていたことを知ったのです。つまり母親も
小さい時に母親から愛されたことがなかったので、自分の子供を愛することを知ら
なかったというのです。

　よく自分の産んだ子の首を締めて殺したとか、公衆便所に捨てた、といった痛ま
しい事件を耳にしますが、そんな人は母親失格、人間失格です。母親としての愛情
のかけらもないのでしょうか。

　人間は愛され、赦されて、はじめて立ち直るものです。責めてばかりいたのでは、
自分の悪いことを隠す人になります。あのヨハネ福音書8章に登場する姦淫の場で
捕えられた女性は、衆人監視の中で責められ、辱められて卑屈になってしまいました。
ところがイエスから『わたしもあなたを罰しない、行って再び罪を犯さないように』
と諭されたとき、そのイエスの愛に触れて彼女は生まれ変わったのです。そして
イエスが十字架にかけられたとき、最後までイエスに従い、十字架のもとにいた数人
の女性のひとりとなったのです。『愛はすべての罪を覆う』とあります。

　またルカ福音書19章のエリコの町の取税人ザーカイも、誰からも愛されない孤独
な人でした。ところが、そのザーカイのところにイエスは来られたのです。そして
彼はイエスの愛に触れたとき愛の人に変えられたのです。誰からも愛されないとき
のザーカイは冷酷な人、心の冷たい人でした。しかし彼を変えたのはイエスの愛
だったのです。どんな人でも『愛されて初めて変わるのです』。
ですから、わたしたちもイエスの愛を信じて生まれ変わり、人々を心から愛する
ことのできる『愛の人』になりたいものです。そうすればあなたの回りの世界が
変わるのです。人間は横着で、人の変わることのみを要求しますが、大事なのは、
まず自分自身が変わることです。自分が変われば回りの人が変わります。

　ガラテヤ書5章22節に『御霊の実は愛･･･』とありますが、御霊の力に満たされた
人は『愛の人』になります。この一年間、神に近づき、御霊の力に満たされ、人々を
心から愛することのできる人、恵まれたクリスチャンとしての歩みをしてください。

　皆様のこの一年間の祝福をお祈りいたします。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　           　 　　　(Jan.3.2010)